架電数は増えた。アポイントも取れている。それなのに、受注につながる商談が増えない。営業担当からは「もう少し確度の高い案件がほしい」と言われ、現場は対応に追われている。

こうした状況を変えるには、トークスクリプトの修正や人員の追加だけでなく、組織の設計を見直す必要があります。誰にアプローチするのか。何を成果として評価するのか。どの状態になったら次の担当者へ引き継ぐのか。その認識がずれたままでは、活動量を増やしても成果につながりにくくなります。

本記事では、結果の出るインサイドセールス部隊をつくるために、役割分担、KPI、部門連携、人材育成をどう組み立てるかを解説します。後半では、立ち上げから90日間の進め方も紹介します。

1. 最初に決めるのは「誰に、どんな商談をつくるか」

組織づくりの出発点は、インサイドセールスに任せる仕事と、期待する成果を明文化することです。まずは次の3点を、一枚の資料にまとめてみてください。

  • 対象顧客: どの業種・企業規模・部署が対象で、どんな課題を持つ企業を優先するのか。
  • 担当範囲: 新規開拓、問い合わせ対応、休眠顧客への再接触のうち、どこまでを担当するのか。
  • 引き継ぐ状態: 何が確認できれば、フィールドセールスが商談を進められるのか。

たとえば、資料請求者への初回対応と、まだ接点のない企業への新規開拓では、相手の関心も必要な準備も異なります。反響型のSDRと新規開拓型のBDRを分けて考える際も、名称より先に、自社で担う業務を具体化することが大切です。KPIも業務の違いに合わせて設計する考え方が示されています。参考:HubSpot「インサイドセールスのKPI」

少人数の段階で、必ずしも専任チームを二つつくる必要はありません。同じ担当者が兼務する場合も、「午前は新規開拓」「問い合わせは当番が優先対応」のように、時間と優先順位を分ける方法があります。急ぎの対応が入るたびに新規開拓が止まるなら、担当人数よりも先に、業務の割り当てを見直しましょう。

「有効商談」の条件を営業と合意する

アポイントを取得した段階で、すべてを有効商談と数えると、営業側との認識がずれることがあります。そこで、商談を受け取る側と一緒に、受け入れ条件を決めます。

たとえば、「対象企業の条件に合っている」「顧客の課題と関心が記録されている」「次回話すテーマに顧客が合意している」といった条件です。予算や導入時期が未確定でも、課題を整理する商談として受け入れるのか。その判断も事前にそろえます。

条件を厳しくしすぎると、これから検討が進む顧客を取りこぼす可能性があります。すぐに営業へ渡す顧客と、情報提供を続ける顧客の両方に、次の行動を用意しておくことが必要です。

2. KPIは受注から逆算し、現場で改善できる数字につなぐ

営業組織としては、受注につながったかを確認する必要があります。一方で、受注には提案内容や価格、商談担当者の対応なども関わります。インサイドセールスの評価を受注数だけに寄せると、本人が改善できる行動が見えにくくなります。

Salesforceが2022年に紹介した自社の運用では、案件として受け入れられた数や金額などと、接触件数・アポイント件数などの活動目標を扱っています。活動とその先の成果をつないで見る点が参考になります。参考:Salesforce「インサイドセールスチームのKPIとミッション」

自社で運用する際には、次のように役割を分けると整理しやすくなります。

  • 成果を見る指標: 営業が受け入れた有効商談数、その商談から生まれた案件や受注。
  • 改善箇所を探す指標: 初回対応までの時間、接続率、商談実施率、営業の受け入れ率。
  • 実行を管理する指標: 接触対象数、架電数、フォロー実施数、次回対応日の登録状況。

毎日の会議で、すべての数字を確認する必要はありません。チームの目標となる指標を決め、未達の理由を調べるときに補助指標を使う運用にすると、改善の議論を進めやすくなります。

数値例:目標商談数を、必要な活動に分解する

ここでは説明用に、次の仮定を置きます。実績値や業界平均ではありません。

  • 目標受注数:10件
  • 営業が受け入れた有効商談からの受注率:20%
  • 実施した商談のうち、営業が有効と認める割合:80%
  • 予約した商談が実際に行われる割合:80%

この場合、必要な有効商談は「10件 ÷ 20% = 50件」です。有効商談50件をつくるためには、商談実施が約63件、商談予約が約79件必要という計算になります。端数は最後に切り上げています。

このように分解すると、予約数を増やすべきなのか、キャンセルを減らすべきなのか、商談の受け入れ条件を見直すべきなのかを考えられます。

ただし、今月予約した商談が今月受注するとは限りません。計画をつくる際は商談から受注までの期間を見込み、検証時には同じ期間に獲得した商談のその後を追います。今月の受注数を今月の新規商談数で割るだけでは、実態と異なる受注率になることがあります。

3. 分業と同時に「引き継ぎ」と「戻し方」を設計する

マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスを分けても、それぞれが自部門の数字だけを追えば、顧客への対応は途切れてしまいます。The Modelを参考にする際も、役割分担とあわせて、部門共通の目標と連携方法を整えることが重要です。参考:Salesforce「インサイドセールスとフィールドセールスの分業・連携」

引き継ぎの記録には、連絡先に加えて、少なくとも次の情報を残す運用を提案します。

  • 顧客が話した課題と、現在の対応方法
  • 検討のきっかけや、次回の会話で確認したいこと
  • 相手の役割と、ほかに関わる人
  • 合意した次の行動、日時、担当者

「興味あり」「温度感が高い」だけでは、後任が判断しにくくなります。「今の仕組みでは月末の集計に時間がかかり、来期までに見直したいと話している」のように、顧客の発言と担当者の推測を分けて記録します。顧客が次の商談で同じ説明を繰り返さずに済むことも、記録の大切な役割です。

引き継ぎ後は、営業側が「受け入れ」「追加確認」「継続フォロー」のいずれかを返します。返答期限は自社の営業日や対応量に合わせて合意し、差し戻す場合は理由と次の担当者を明確にします。

週次の連携会議では、受け入れ率だけでなく、商談後に進展した案件と、止まった案件を少数ずつ確認しましょう。「どの情報があれば前に進んだか」を共有できれば、翌週のヒアリングや対象選定を具体的に変えられます。

4. 人員計画には、育成と改善の時間も組み込む

必要人数を考えるときは、架電だけでなく、企業調査、メール作成、記録、引き継ぎ、振り返りにかかる時間も見込みます。

たとえば、月間の対応業務が合計240時間で、一人がその業務に充てられる時間を月80時間と仮定するなら、必要な対応能力は3人相当です。この80時間は説明用の仮定であり、会議・研修・休暇などを踏まえた自社の実測値に置き換えてください。マネジメントまで含めて3人で足りる、という意味ではありません。

採用時も、話し方の印象だけで判断するより、「顧客の話から課題を整理する」「分からない点を確認する」「会話を簡潔に記録する」といった仕事に近い場面を評価すると、期待する役割を伝えやすくなります。

育成は、スクリプトの暗記から会話の判断へ

スクリプトには、話す順番に加えて「なぜその質問をするのか」「回答によって次の質問をどう変えるか」を残します。

振り返りでは、アポイントが取れたかに加え、顧客の状況を確認できたか、提案する理由が相手の課題につながっていたか、次の行動に合意できたかを見ます。マネージャーが改善点を一度に大量に伝えるより、「次の一週間は検討のきっかけを聞く」と、試す行動を絞る方法が考えられます。

成果を出している担当者の会話も、結果だけを共有して終わらせません。どんな相手に、どの質問が機能したのかまで記録することで、ほかのメンバーが試せる形になります。

5. ツール・AI・外部パートナーは、任せる業務から選ぶ

ツールの導入前に、チームの時間がどこで使われているかを確認しましょう。企業調査に時間がかかっているのか。日程調整の往復が多いのか。情報が分散しているのかによって、必要な仕組みは変わります。

AIを活用するなら、企業情報の整理、メールの下書き、記録の要約など、確認・修正する人を決められる業務から検討できます。生成した内容はそのまま顧客への事実として扱わず、情報源や会話内容との照合を運用に含めます。

外部パートナーを活用する場合も、架電件数やアポイント件数だけでなく、有効商談の定義、記録項目、改善会議への参加範囲をそろえます。対象顧客や商談条件の最終判断、データの管理責任は社内の誰が持つのかも決めておきましょう。

問い合わせが集中する時間帯の対応や、新規開拓の実行など、任せる範囲を具体化できれば、社内チームも自分たちが集中すべき仕事を判断しやすくなります。

6. 最初の90日で、改善を続けられる運用をつくる

立ち上げ初期は、対象範囲を広げすぎず、特定の顧客層や施策で検証を始める方法を提案します。以下は進め方の一例です。検証の期間は、商材の検討期間や人員体制に合わせて調整してください。

1〜30日目:対象と判断基準をそろえる

対象顧客、担当範囲、有効商談の条件、記録項目を決め、小規模に運用します。対応時間や接続状況を測り、最初に置いた目標と実際の業務量に差がないかを確認します。この段階では、数字の良し悪しに加えて、同じ基準で記録できているかを重視します。

31〜60日目:商談後の反応をもとに改善する

営業が受け入れた理由と差し戻した理由を整理します。「対象企業が合っていない」のか、「聞くべき情報が不足している」のかを分け、対象リストや質問を修正します。変更内容と実施日を記録し、何を変えた結果なのか追える状態にします。

61〜90日目:再現できる部分を広げる

機能した対象条件や会話の進め方を文書化し、ほかの担当者でも運用できるかを確認します。そのうえで、人員の追加、対象の拡張、自動化、外部委託を検討します。まだ受注までの結果が見えない場合は、有効商談や案件の進展を確認し、受注率の判断を急がないことも大切です。

結果が積み上がる組織は、顧客の情報と次の行動がつながっている

インサイドセールス部隊の成果は、担当者の努力に加えて、努力を商談につなげる設計に左右されます。

対象顧客と有効商談の条件をそろえる。活動と成果を結び付けて振り返る。引き継ぎ後の反応を現場へ戻す。育成と改善の時間を確保する。この運用を重ねることで、担当者が変わっても学びを引き継げる組織に近づきます。

まずは直近の商談を振り返り、「どんな条件の顧客が、何をきっかけに次の段階へ進んだか」を、営業とインサイドセールスで確認するところから始めてみてください。

Canviは、営業活動の実行と、業務を支える仕組みづくりを支援しています。新規開拓、問い合わせ対応、営業・採用DX、AI活用など、現在の課題に合わせてご相談いただけます。

Canviの事業・プロダクトを見る

インサイドセールスの体制づくりを相談する